<開催期間終了>【取材レポ】リニューアルしたスヌーピーミュージアムで企画展「旅するピーナッツ。」が開催。ピーナッツ・ギャングの愉快な冒険を堪能する

世界で愛されている人気コミック『ピーナッツ』の魅力を伝える「スヌーピーミュージアム」(東京・町田市)が、新たな常設展示や光・音楽・映像によるショー演出を充実させて2024年2月1日にリニューアルオープンしました。
同時に企画展「旅するピーナッツ。」も開幕。(2024年9月1日まで)
プレス向けギャラリートークに参加してきましたので、企画展やリニューアルした施設の様子を紹介します。

『ピーナッツ』ファンの聖地であるシュルツ美術館、その世界唯一の公式サテライト
『ピーナッツ』は、少年チャーリー・ブラウンとその愛犬スヌーピーを中心に、ルーシー、ライナス、ウッドストックなど個性豊かな仲間たち“ピーナッツ・ギャング”が織りなす日常を描いたアメリカの人気コミック。チャールズ ・M・シュルツ(1922-2000)により1950年から約半世紀にわたり、毎日(1997年に取得した5週間の休暇以外)欠かすことなく新聞で連載された作品です。
2002年、シュルツのアートの保護と展示、解釈を行う場として、カリフォルニア州サンタローザに作家自身が監修した「シュルツ美術館」(チャールズ M. シュルツ・ミュージアムアンドリサーチセンター)が開館。世界一の原画コレクションを誇ることから『ピーナッツ』ファンの聖地として愛されています。
その世界唯一の公式サテライト(分館)としてオープンしたのがスヌーピーミュージアムであり、2016年に六本木で誕生。2019年に東京・南町田グランベリーパーク内へ移転して再スタートを切りました。大規模なリニューアルが行われるのは今回が初めてのことです。
同ミュージアム2階ではおよそ半年ごとに企画展を実施しており、リニューアルオープン後の記念すべき第1弾として開幕したのが「旅するピーナッツ。」です。
ピーナッツ・ギャングの愉快な冒険模様を追う「旅するピーナッツ。」

タイトルのとおり本展のテーマは“旅”で、基本的にアメリカの子どもたちとスヌーピーの身の回りで起きる出来事を描く『ピーナッツ』のなかで、まれに登場するお出かけエピソードに着目。おなじみのサマーキャンプはもちろん、ビーチや砂漠といった非日常を舞台に愉快な冒険を繰り広げるピーナッツ・ギャングの物語を、シュルツ美術館が所蔵する貴重な原画など45点で紹介しています。


たとえば、ペパーミント パティが家族旅行でパリを訪れるという1984年に発表された一連のエピソードがありますが、エッフェル塔などの観光名所が描かれること自体『ピーナッツ』では珍しいこと。
ペパーミント パティは手紙と写真を送って、パリでの思い出を友人たちと分かち合おうとします。しかし、学校の授業で習ったはずのエッフェル塔を、居眠りしていたせいで全く覚えていません。おしゃれなレストランでは得意げにジャンクフードを注文してしまいます。そのちょっぴりとんちんかんな内容に思わずクスッと笑いがこぼれます。

ビーチに遊びにいき、砂の城をつくったライナスは出来栄えをルーシーに自慢しますが、ルーシーは「こんな城に住める人なんていないわよ!」とつれない返事。せっかくつくった作品にケチをつけられる悲しいエピソードかと思いきや、スヌーピーとウッドストックたちにはベストサイズだったというオチでした。


旅を満喫する姿がある一方で、仲間とともに訪れたサマーキャンプでは出発前に憂鬱な気持ちになったり、大雨でテンションが下がったり、家に帰りたくなったり……。誰しも身に覚えがあるだろう旅のままならなさや複雑な心境も、ユニークに描き出されています。

さらには、テニスの大会に出場するためにウィンブルドンへ向かったスヌーピーがなぜかカンザスシティに降り立ったり、スパイクに会うため砂漠へ向かったオラフとアンディが雪国で迷子になったりとハプニングも。
しかし、スヌーピーはカンザスシティに着いても焦らず、チャーリー・ブラウンへ贈るグリーティング・カードを探すなどいたってマイペースです。オラフとアンディも迷子は慣れっこ。4週間たっぷりさまよったあげく、一発逆転のアイデアとしてミッキーマウスにリムジンを回してもらおうと大それたことを相談する始末。読んでいると知らず知らずのうちに肩の力が抜けていきます。

彼らの冒険には喜びも、思い通りにならない試練もついてきます。それでも、展示を見終わったときには不思議と「旅っていいものだな」としみじみ感じられる、そんな魅力的なエピソードが集められていました。
原画中心の展示ということで、アシスタントをつけずにすべて一人で制作を続けたというシュルツのシンプルな筆づかいやデザインの妙も間近で堪能することができます。
シュルツ美術館&リサーチセンターのキュレーターであり、本展で解説を担当したベンジャミン・L・クラークさんが見どころとして挙げたのが、1968年7月31日に発表された、黒人のキャラクターであるフランクリンが初登場する回の原画です。

チャーリー・ブラウンの野球仲間で、いつでも穏やかなよき隣人であるアフリカ系アメリカ人のフランクリン。初登場時のエピソードは、チャーリー・ブラウンがビーチボールを紛失したところへ、フランクリンがボールを持って現れ、ごく自然に会話をして仲を深めていくという2人の出会いを描いたものでした。
この原画を指してクラークさんは「アメリカのポップカルチャーで非常に重要な意味をもつコミック」であると話します。
というのも1986年のアメリカは、その年の4月に起きた公民権運動の黒人指導者マーティン・ルーサー・キング牧師の暗殺を受けて全米で暴動が相次ぎ、人種問題で大いに揺れていた時期でした。そんなとき、現状を憂いたひとりの女性ファンが、全米に影響力のあるコミックの作者であったシュルツに対し、『ピーナッツ』の仲間に黒人の子どもを加えてはどうか、と手紙で提案します。
クラークさんによれば、アメリカのコミックの世界で、それまで黒人のキャラクターはほとんど人種差別を受けるような形でしか描かれてこなかったとのこと。そのためシュルツも提案を受けたい気持ちはあれど、正しく描けるのかという懸念から最初はためらいがあったそう。
しかし、文通を重ねていくなかで心を決め、どうやってフランクリンを自然な形で登場させられるかと考え、結果ビーチで出会う二人のエピソードが誕生したということです。
「その後、フランクリンは『ピーナッツ』のなかで、非常に中心的なキャラとして残ることになりました」とクラークさん。本展に訪れた際はぜひ、当時のアメリカ人がフランクリンの登場に受けた衝撃に思いを馳せながら原画を鑑賞してほしいと思います。

また、たくさんの魅力的な旅のエピソードを制作してきたシュルツですが、意外なことにかなりの旅行嫌いだったそう。それでも仕事の打ち合わせや講演、チャリティーイベントへ出席するため世界を飛び回っていたといいます。
本展では原画以外に、シュルツが写ったさまざまな旅行先での写真も資料として展示されており、その旅の経験が作品に影響を与えていただろうことが伺えました。コミックに登場する、旅先で家に帰りたがるキャラクターたちの言葉は、もしかしたらシュルツの心の声なのかもしれません。
『ピーナッツ』に登場するキャラクターの多くはシュルツの知り合いがモデルになっていることはよく知られていますが、スヌーピーのきょうだいであるアンディも、シュルツの愛犬だったワイヤー・フォックス・テリアの“アンディ”がモデル。会場にはモデルのアンディをシュルツが抱きしめる愛らしい写真もありました。モコモコ、ふわふわ具合がそっくりですので、ぜひ探してみてください。
みんなでつくる「スヌーピー・ワンダールーム」や魅惑のショー演出でパワーアップしたスヌーピーミュージアム
リニューアルで常設展示を大幅に拡充したスヌーピーミュージアムについて、新登場したもの、進化した展示を中心に紹介します。

ミュージアムの入り口には、大きく口を開けた「スヌーピー・エントランス」が新たに出現しました。続く1階ロビーの天井には、以前はなかった雲のような形のミラーがいくつも吊るされており、鏡面にはピーナッツ・ギャングの姿があります。スヌーピーの体を通ることで、来場者を彼らの世界に入り込んだような感覚にさせ、それをキャラクターたちが出迎えるという仕掛けです。

なお、チケットについては、同ミュージアムが六本木にあった時代に提供していた「スペシャルコミックチケット」が復活。約50年間に描かれた17,000を超す膨大なコミックの中から、来場したその日の日付で発表された作品がチケットにプリントされているため、来場記念としてもぴったりです。(各日全4種類をランダム配布)

展示は2階と3階にあり、3階に上ってから順に降りて巡っていく形です。3階で最初に足を踏み入れるのは、かつて「オープニング・シアター」があった場所。今回のリニューアルの目玉として新設された「スヌーピー・ワンダールーム」です。

コンセプトは“みんなでつくる、みんなのミュージアム”。約300体のぬいぐるみをはじめ、衣服やステーショナリー、ペットボトルのキャップなど、ファンからの寄贈品をふくめた古今東西の多種多様なスヌーピー・グッズ1,000点以上が並んでいます。

本ミュージアムのクリエイティブディレクターである草刈大介さんは、「スヌーピー・ワンダールーム」を新設した理由について次のように話しました。
「『ピーナッツ』の始まりは1950年から始まったコミックですが、来場される方々にとって一番親しみがあるのはプロダクトです。身近なものを一つの接点にして、部屋に入ってきたときに驚くと同時に笑顔になる。そして自分が持っているもの、見たことがあるもの、誰かの思い出が詰まっているものを発見するという行為を、この最初の部屋で経験していただくことが、新しいうれしさにつながるのではと考えました」
なお「ワンダールーム」とは、現在の博物館や美術館の前身で、15~18世紀頃に欧州の王侯貴族や権力者たちの間で流行した世界中の珍品を収集・展示した部屋である「ヴンダーカンマー(驚異の部屋)」にインスピレーションを受けたものとのこと。



2階の「スヌーピー・ルーム」は、全長約8メートルの巨大な「スリーピング・スヌーピー」をはじめ、スライディングしたりハロウィンの仮装をしたりと、コミックで登場したユニークな姿をもとにしたスヌーピー像がずらりと並ぶ、同ミュージアムの人気展示室です。

ここでは新たな演出として、映像・光・音楽による圧巻のショー「覚醒」が加わりました。約5分に1回の頻度でスタートする約2分間のショータイム。ときにアップテンポに、ときにムーディーに表情を変える音楽にあわせて、スヌーピーが壁や床などフロアを駆け回っている映像を楽しめます。

1階にあるミュージアムショップ「BROWN`S STORE」ではグッズ展開を大幅に増量し、約半数に当たる165点が新発売。スヌーピーの耳がついたカチューシャとチョーカーのセットや、館内や鶴間公園に展示されているスヌーピーをモデルにしたアクリルスタンド、メディコム・トイ「ULTRA DETAIL FIGURE」シリーズの新作など、世界でここにしかないオリジナルグッズが盛りだくさんです。


なお、スヌーピーミュージアムに隣接する「PEANUTS Cafe SNOOPY MUSEUM TOKYO」も同時にリニューアルオープンしています。新たにスヌーピーミュージアムを眺めながら食事ができるテラス席が設置されました。


グランドメニューも一新。チャーリー・ブラウンのアイスを欲しがった末、顔の上にアイスを落してしまったスヌーピーのコミックを表現したデザートプレートや、作者のシュルツが大好物だったというツナサンドをイメージした“ツナメルト”入りのピクニックボックスなど、ボリュームでもかわいさでも、ファン心を刺激するという点でも大満足できそうなラインナップになっています。


見れば思わず旅に出たくなる企画展「旅するピーナッツ。」の開催は2024年9月1日まで。
企画展とあわせて、より内容が充実したスヌーピーミュージアムで、世界中で愛され続ける『ピーナッツ』の世界を体感してみてはいかがでしょうか。
© 2024 Peanuts
「スヌーピーミュージアム」概要
| 所在地 | 東京都町田市鶴間3-1-4 南町田グランベリーパーク内 (東急田園都市線・南町田グランベリーパーク駅より徒歩4分) |
| 営業時間 | 10:00~18:00(土日祝は19:00まで) ※最終入場は閉館時間の30分前 |
| 休館日 | 1月1日、2月20日、他年1回 |
| チケット料金 | 前売券:一般・大学生 1,800円、中学・高校生 800円、4歳〜小学生 400円 当日券:一般・大学生 2,000円、中学・高校生 1,000円、4歳〜小学生 600円 |
| 電話番号 | 042-812-2723 |
| 公式サイト | https://snoopymuseum.tokyo/ |
※本記事の情報はプレス内覧会時点のものです。最新の情報は公式サイト等でご確認ください。