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【インタビュー】秋田に感動と交流の輪をひろげる、新たな芸術・文化の創造拠点「あきた芸術劇場ミルハス」が誕生!

東北地方の北西部、日本海に面する秋田県。自然に恵まれた環境もさることながら、〈男鹿のナマハゲ〉や〈秋田竿燈まつり〉など、独自の豊かな文化が息づくこの土地に新たな文化施設が誕生し話題を呼んでいます。

県庁所在地である秋田市の中心市街地に、秋田県・市が連携し整備を進めてきた、県内最大規模となる文化施設「あきた芸術劇場ミルハス」。2022年6月に開館し、9月23日、待望のグランドオープンを迎えました。

今回は、ミルハスの企画事業・広報課長を務める下村直也さんに、施設の魅力について聞きました。

企画事業・広報課長の下村直也さん。秋田魁新報社からの出向で記者歴約30年の経歴を持つ。

――「あきた芸術劇場ミルハス」はどのような経緯で誕生したのですか。

秋田県民会館と秋田市文化会館という県を代表する二つの文化施設の老朽化を受けて、全国的にも珍しい県と市の共同整備により、新しい芸術と文化の創造拠点として秋田県民会館の跡地に建設されました。

県と市が連携して整備すると、整備費などのコスト削減につながるほか、さまざまな芸術・文化活動に対応する機能を集約した施設にすることで、これまでは設備不足などで受け入れできなかった大規模なイベントやコンサートの誘致を見込めるという期待もあります。

6月の開館から早くも多くの方々に来館いただき、9月に待望のグランドオープンを迎えました。秋田市民に限らず、秋田県民みんなが集える施設になってほしいですね。

JR秋田駅から徒歩10分ほど。久保田城跡にある都市公園・千秋公園の麓、お堀に面した「あきた芸術劇場ミルハス」。愛称のミルハスは、千秋公園の由来でもある長久の意味を持つ「千」を意味するフランス語「mille(ミル)」と、千秋公園の「蓮(ハス)」を合わせたもの。

――どういった設備を整えているのでしょう。また、見どころを教えてください。

高い音響性能と舞台機能を併せ待つ大ホール、臨場感あふれる中ホールをはじめ、二つの小ホール、練習室、研修室、創作室を備えた劇場になります。

正面入口から入ってすぐのエントランスロビー。ナチュラルな色合いで、開放感がある。
誰でも気軽に弾けるアップライトピアノも設置。

見どころは、第一に「大ホール」です!

2,007席という東北でも有数の規模を誇り、音響設備にもこだわっています。天井が高く、秋田杉の木レンガを使った壁面、音響反射板の役割を果たす上部の「浮雲」により、柔らかくブレンドされた豊かな響きが生み出されます。また、オーケストラピット、仮設の花道も設置可能で、クラシック、歌舞伎、オペラ、ミュージカル、ロック、J-POPなど幅広い演目に対応できるのが強みですね。

そして、演劇や舞踊といったさまざまな舞台芸術活動に利用できる「中ホール」。こちらは大ホールと異なり、敢えて音の反響を抑えて演者の肉声が客席に届きやすい設計にしているので、臨場感あるステージを体感してもらえると思います。

天井が高く、高揚感あふれる大ホール。鑑賞のしやすさを重視したゆとりある設計で、会場の一体感を醸成する。内壁には、秋田杉の木レンガを積み重ねることにより、秋田の文化史を〈層〉として表現している。
壁面に「組子細工」のデザインを取り入れた、800席を備える中ホール。秋田銀行から寄贈された「みのり」と題し、「秋田竿燈まつり」などが描かれた緞帳も特徴的。

こうしたステージのほか、館内の空間デザインにもこだわっています。ミルハスの建設地は、久保田城跡であり、秋田県公会堂や秋田県記念館などこれまでも重要な文化施設が立地していまして、城跡という地にふさわしく、〈歴史的な背景に呼応し、周辺の樹木など環境に調和した施設〉をコンセプトに建設されました。

館内には、日本三大美林の一つに数えられる秋田杉をふんだんに使用しており、樺細工や大館曲げわっぱ、川連漆器など、秋田の伝統工芸品を随所に散りばめているのも特徴です。館内を歩けば、秋田の魅力を十分に感じていただけると思います。

エントランスを入って左手にある「総合案内」。
樺細工や大館曲げわっぱ、川連漆器といった秋田の伝統工芸品を組み合わせた、大ホール外壁の壁にある、一際目を引く大きな意匠。
大ホールの天井部にある円状の照明・音響反射板「浮雲」にも、組子細工のデザインが施されている。

――施設の見学は誰でも自由にできますか。

1Fのエントランスロビーは自由に出入りできます。3・4Fの千秋公園などを臨むフロア「ホワイエ」、眺望ロビーなどは、ホールで公演のない時に開放していますよ。また、1Fには「シアターカフェC’s(シーズ)」もあり、気軽にお食事や交流を楽しむこともできます。

大ホールと中ホールの入場口がある3・4Fに位置する「ホワイエ」は、千秋公園などが臨める開放感のある空間。
4F西側の「眺望ロビー」からは、秋田市の市街地が見渡せる。

――6月の開館からこれまで来館した人たちの反応はいかがですか。

週末を中心にすでに多くの方が足を運び、見学ツアーも好評いただいています。見学ツアーは、実は当初は行っていなかったのですが、「大・中ホールを見たい」という声を多くいただいて始めたんです。週末だけでなく予約制の平日も来場者が多く、関心の高さを実感しているところです(10月以降の見学ツアーに関しては調整中)。

練習室や創作室の利用も増えてきており、ダンスやバンドの練習、作品展示など、さまざまな用途にご利用いただき、少しずつ地域に定着してきていると感じています。

合唱や楽器演奏、ダンスなど用途に応じた9室の練習室。
創造活動を支援する多彩な用途に利用できる創作室は5室あり、隣合う3室の間仕切りを取り外して広く使うこともできる。

――利用者からの感想や意見で印象に残っていることはありますか。

実際にツアーを回られた方からは、「立派な施設ができてうれしい」、「新しいお気に入りの場所ができました」など、うれしいお言葉をいただいています。大ホールを見たときに「お〜」と感嘆の声をあげる人も多く、驚かれる様子は忘れられない。そうした声を聞くにつれ、「ミルハス」に携わることへの喜びを感じるとともに、もっとたくさんの人に利用していただける施設にしていきたいという思いが強くなりますね。

 

――9月23日、ついにグランドオープンを迎えましたね。記念公演などのイベントが行われ、いよいよ施設の本格的な稼働が始まりましたが、これまでどのような準備をされてきたのでしょう。

グランドオープン後から始まる各ホールの貸し出しに向けて、県内の文化団体の協力を得まして、舞踊や演劇、吹奏楽の演奏を行っていただき、舞台設備の確認や扱いの習熟に努めてきました。

9月23日にグランドオープン記念特別公演となるクラシックコンサート、翌24日・25日には、これまでも秋田での公演を積み重ねてこられた徳永英明さんの「プレミアムアコースティックコンサート2022」が行われ、その取り組みを生かすことができたのではないかと思います。

9月23日、グランドオープン記念特別公演として、指揮・井上道義さん、ピアノ・小山実稚恵さんと、新日本フィルハーモニー交響楽団との共演によるクラシックコンサートが開催された。

――今後の展望をお聞かせください。

秋田の新しい芸術・文化の創造拠点として、県民・市民の芸術・文化活動のサポートをしていくと同時に、各種公演・イベントをこれから数多く開催していきたい。また、「ミルハス」は、秋田市の中心市街地にあり、近隣にも多くの施設があります。子どもから大人まで老若男女が、気軽に利用できる交流の場となることで、この場所を起点に市街地が活性化する役割を果たせたらと思っています。

そのためにやるべきことは、まだまだたくさんありますが、周辺の文化施設や県内の文化団体、近隣の商店街・商業施設のみなさん、さらには秋田に縁のある文化・芸能関係者の方のお力もお借りしながら、目指す姿に近づいて行けるように取り組んでいきたい。すでに来館された方はもちろん、何度でも足を運んでいただけるように魅力ある施設にしたいと思いますので、ぜひご来館ください。


【編集後記】

以前この場所にあった秋田県民会館では、多くの人々が芸術・文化活動で訪れていて、閉館後はさびしい思いをしていた利用者も多かったことでしょう。

そうした中、待ちに待って誕生した「あきた芸術劇場ミルハス」。今回、取材に訪れ館内を歩くと、美しく居心地の良い内観、これまでにないような立派なコンサートホールに興奮が隠しきれませんでした。9月のグランドオープン以降は、著名なミュージシャンをはじめ、すでに多くのコンサートの予定が発表されています。

コンサートを観に訪れるのもよし、文化活動や地域コミュニティの場にするもよし、ここでどんなことが体験できるのか、どんな芸術・文化が生まれはばたいていくのか、今後の発展がとても楽しみでワクワクしますね。可能性は無限大、秋田県に生まれた新たな芸術・文化の創造拠点にぜひ一度、足を運んでみてください。

 

【施設データ】

名称 あきた芸術劇場ミルハス
住所 秋田県秋田市千秋明徳町 2-52
アクセス JR 秋田駅から徒歩約10分、秋田空港から車で約40分
営業時間 大・中・小ホール 9:00〜22:00(研修室、創作室、練習室は23:00まで)
休館日 12月29日〜1月3日(ホールは基本的に毎週火曜休み)
電話番号 018-838-5822
駐車場 あり
HP https://akiat.jp/

※詳しい情報は上記HPにてご確認ください。