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<開催期間終了>【インタビュー】美術館個展「今井俊介 スカートと風景」が香川で開催!カラフルでポップな色彩の世界はどのように生まれるのか?

untitled(H×W×D)2022
高さ2m10cm、横5m50cmの巨大な絵画作品の前に立つ、今井俊介さん。

2022年7月16日(土)から11月6日(日)までの約4ヵ月間、香川県丸亀市にある丸亀市猪熊弦一郎現代美術館では、現代美術作家・今井俊介さんの美術館における初個展「今井俊介 スカートと風景」を開催しています。

今井さんの代名詞といえば、鮮やかなストライプを特徴とする絵画シリーズ。全国でも類を見ない「駅前美術館」として、地元では街のシンボルとして愛されている同館の正面には、そのストライプがデザインされた巨大フラッグが掲げられています。

JR丸亀駅前の風景に溶け込むようにある《untitled》は、美術・芸術とは何かを難しく感じさせることはなく、シンプルにその色彩の美しさを目に訴えかけてきます。

今回は今井さんご本人と担当学芸員の竹崎さんに、本展の魅力や制作過程についてお話を伺いました。

画家・猪熊弦一郎の巨大な壁画《創造の広場》やオブジェが設置された美術館のゲートプラザで、風にたなびく鮮やかな色彩。

 

――美術館初個展ということですが、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催するに至ったきっかけを教えてください。

竹崎:当館は新しい表現を見せる場として、これまで最前線で活躍する作家をご紹介してきました。今井さんも例に違わず、国内外で作品を多数発表し、気鋭のアーティストとして注目されていることから今回の展覧会を企画しました。

独自のポップな色彩感覚で、波や旗のようにも見えるイメージを表したシリーズは、今井さんがある時、何気なく目にした知人の揺れるスカートの模様や、量販店に積み上げられたファストファッションの色彩に強く心を打たれた体験が原点となっています。具象と抽象、平面と立体、アートとデザインという境界を軽やかに行き来しながら、表現の研究を続けてきた彼の作品の世界をお愉しみいただけたらと思います。

 

――作品の原点となったという“スカート”が入った本展のタイトル「スカートと風景」ですが、タイトルに込めた想いは?

今井:まず、これまでは作品に関連した英語タイトルを展覧会ごとにつけてきましたが、今回は日本語にしたいと思いました。実は最初につけたタイトルは「あなたの風景になりたい」で、アーティストの池間由布子さんの同名曲のタイトルだったんです。お客さんが見る風景として僕の作品があったらいいなという想いがあり、最終的に「スカートと風景」になりました。

大小のキャンバスに、さまざまな色や形を落としこむことで生まれた絵画作品。額縁はなく、展示室の壁はシンプルな白で統一され、今井さんの生み出すポップな色彩の世界に存分に浸ることができる。
布の柄から一部を抜き出して描いたことがわかる展示。奥行きのような空間性を排除して描かれていても、ジッと見つめていると波のように動いて見えたり、奥行きを感じたりする。1つの作品の前で、注視してみるのも面白い。
NOWHAW “day”pajama(Shunsuke IMAI) パジャマブランド「NOWHAW」とのコラボレーション作品。

――本展ではどのような作品が展示されていますか?

竹崎:展示作品数は約50点。《untitled》シリーズの原点となる2011年の作品から、2022年現在までの10年以上におよぶ表現を総覧できる、かつてない規模で一堂に紹介しています。

当館は新しい表現を見せる「現代美術館」であることを1つの使命としています。本展のために制作した多数の未発表作品があり、また絵画を中心に立体作品や大型インスタレーション、舞台映像作家・山田晋平さんとの共作による映像作品、ファッションブランドとのコラボレーションなど、ジャンルを横断する表現もご覧いただけます。今井作品の魅力を多角的に感じられると思うので、ぜひ注目して見ていただけるとうれしいです。

制作風景を撮影した写真がずらりと並べられている。

――赤・青・黄など、色鮮やかなストライプの作品はどのようにして作られているのですか?

今井:キャンバスに向かって絵を描く前に、まずは色やパターンの組み合わせを作って、プリントしたものを自分の手で歪ませながら色やかたちを探していきます。それをキャンバスに描いています。

なぜそんな描き方になったかというと、僕は絵が下手だったから。いろんな方法を試してきましたが、ルールを決めて誰でも塗れるベタ塗りを使って、決められたところを塗り終われば完成とすれば僕でも描けるなと。

絵を描く前に、作品を構成する基礎となる色や形のパターンを確認。1枚の布に転写された部分のどこを切り取るかによって、作品の印象がガラッと変わる。

――そうして作られた作品の色やパターンには無数のバリエーションがあって、似ているようだけど同じものは1つとしてないというのが面白いですね。

今井:ひとつのパターンから切り取るところを変えて複数の作品を作ったりしています。同じものを見ていても、人によってとらえ方は違ったりしますよね。そういうことが見えてきたらいいなと思っています。

1階エントランスに掲げられたフラッグ。
untitled 2017

―作品を鑑賞する人には、今回の展覧会や作品を通してどんなことを感じてほしいですか?

今井:作品を見る側のお客さんには、どのように見てもらっても構わないと思っています。「アート」や「美術」を難しいものだと捉えないでほしい。

僕は作品を見て、「派手な色だな〜」「この色の組み合わせがいいな〜」「この形おもしろい」とか、直感的に感じたものが、その人の僕の作品に対する感想であって、それでいいと思っています。何回訪れても違った楽しみができると思うので、ぜひ足を運んでいただければうれしいです。

 

 

「今井俊介 スカートと風景 Shunsuke Imai:Skirt and Scene」開催概要

会期 2022年7月16日(土)〜11月6日(日)
会場 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
開場時間 10:00〜18:00(入館は17:30まで)
休場日 月曜日(ただし10月10日は開館)、10月11日(火)は休み
観覧料 一般950円(760円)、大学生650円(520円)、高校生以下または18歳未満・丸亀市在住の65歳以上・各種障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
※( )内は20名以上の団体料金。同時開催常設展「猪熊弦一郎展と新収蔵作品による鈴木理策展」観覧料を含む
主催 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、公益財団法人ミモカ美術振興財団
助成 一般財団法人自治総合センター、芸術文化振興基金
協力 ホルベイン画材株式会社、HAGIWARA PROJECTS
お問い合わせ 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館  TEL 0877-24-7755
美術館HP https://www.mimoca.org

※詳しい情報は上記HPにてご確認ください。